生きていくうえで人を好きになるのはごく普通の感情です。ただ、その感情が複数の相手に向けられたら──。
「一人だけを愛することが当たり前」、一夫一妻制の日本ではこの恋愛スタイルが常識とされていますが、複数人の相手を好きになることは決して珍しいことではありません。
浮気・不倫のように「本命」とその他のパートナーがいる関係ではなく、すべてのパートナーに平等に愛情を注ぎ、すべて本命として恋愛をするのが「ポリアモリー」です。
決して一般的な考え方ではないポリアモリー。そこで、20歳~59歳までの男女3,000人に「ポリアモリー」に関するアンケート調査を実施。ポリアモリーという考え方がどれくらい知られているのか、実際にポリアモリーの恋人と付き合ったことはあるか。また、ポリアモリー当事者が抱える悩みや今後の希望について聞きました。
調査期間:2024年12月5日~2024年12月24日 調査対象:全国の20歳~59歳以下の男女 調査方法:インターネット(アンケートサイトFreeasyを利用) 調査エリア:全国 有効回答数:3,000(男性:1,586人・女性:1,414人) ・20代…275人 ・30代…611人 ・40代…965人 ・50代…1,149人 |
まず、「ポリアモリー」自体が何か、知っているかどうかを聞きました。
「はい(ポリアモリーを知っている)」と回答したのは男女3,000人中302人。ちょうど1割の人がポリアモリーのことを知っていました。
男女別で見ると、男性のほうがポリアモリーを知っている割合が高い結果となりました。
ポリアモリーを知っていると回答した人を年代別で見ると、男性は40代が最多で61人(33.9%)、女性は30代が最多で41人(33.6%)でした。
次に、ポリアモリーがどのようなものなのかを説明した後、ポリアモリーに対して「どのようなイメージを抱くか」を聞きました。
男女ともに最多だったのは「理解できない(1,038人)」でした。
<年代別の調査結果>
どの年代も、最多回答は「理解できない」、次いで「自分には無理だと思う」でした。その次に多かった回答を年代ごとに見てみましょう。
ポリアモリーという考え方に歩み寄りの姿勢を示した20代。30代以降は、関係者の同意を得る、全員が幸せと感じるならいいと思うという回答が多くなりました。いずれの年代も、ポリアモリーという考え方は自分事ではないものの、理解を示す結果となっています。
<男女別の調査結果>
女性に比べ、男性の回答割合が特に高かった項目は以下の通り。
| 男性 | 女性 |
楽しそう | 295人(18.6%) | 133人(9.41%) |
幸せそう | 147人(9.27%) | 52人(3.68%) |
うらやましい | 289人(18.22%) | 67人(4.74%) |
自分もしてみたい | 184人(11.6%) | 54人(3.82%) |
反対に、男性に比べて女性の回答割合が高かった項目は以下の通りです。
| 男性 | 女性 |
気持ち悪い | 73人(4.6%) | 201人(14.21%) |
自分には無理だと思う | 350人(22.07%) | 491人(34.72%) |
ポリアモリーという考え方に対して前向きな男性と、後ろ向きな女性という構図がくっきりと浮かび上がりました。
また、その他寄せられた自由記述回答は以下の通りです。
もし、自分の恋人がポリアモリーだとカミングアウトされたら、その後関係をどうするか聞きました。
男女3,000人のうち、「問題なく受け入れて関係を続ける」と答えたのは284人で全体の1割未満でした。
反対に、「受け入れられないので別れる」と回答した人は1,499人で全体の半分という結果に。一般的ではないポリアモリーという考え方に抵抗がある人は多いようです。
一方、「別れないがいったん距離を置く」「受け入れようと努力するが別れるかもしれない」など、好きな相手だからこそ何とか受け止めようとする姿勢を持つ人も。
男女別ではどうなるのでしょうか。
男性より、女性のほうが「別れる」を選択する人が多いことがわかりました。ポリアモリーを受け入れて関係を続けると回答した人は、男性が女性のほぼ倍に。
年代別で見てみると、女性は年代が上がるほど「別れる」を選択する傾向にあります。
男性は年代が上がるほど「別れないがいったん距離をおく」「受け入れようと努力するが別れるかもしれない」の割合が増加。好きな相手だからこそ受け入れようとする姿勢は見て取れるものの、全面的に受け入れると回答した人はやはり少数派です。
現在もしくは過去にポリアモリーの人と交際したことがあるかどうかを聞きました。
「はい(現在交際している)」と回答したのは106人、「はい(過去交際したことがある)」と回答したのは194人で、合計300人でした。
つまり、1割ちょうどの人がポリアモリーの人と交際経験があると言えます。
男女別では、ポリアモリーの人と交際経験があるのは現在・過去のいずれも男性の割合が高いことがわかりました。
交際経験の割合は若い年代のほうが高くなりました。30代以降でも一定数の人が交際した・していると回答しています。
ポリアモリーの人と交際したことがある・交際していると回答した男女300人に対し、パートナーがポリアモリーだとわかったのはどのタイミングだったのかを聞きました。
付き合う前、付き合うとき、付き合い始めた後で、大きな差は見られませんでした。
また、男女差や年齢差も特筆すべき点はありませんでした。
最多回答は「嫌な気持ちになった(75人)」。1票差で「それでもいいと思った(74人)」と続きます。ポリアモリーだと告白され、すぐに受け入れられる人は少数派でしょう。しかし、多くの人が「それでもいいと思った(74人)」「もっと知りたいと思った(52人)」「理解したいと思った(47人)」「受け止めたいと思った(33人)」など、前向きに回答しています。
<男女別の調査結果>
<年代別の調査結果>
性別・各年代で最多だった回答は上記の通りでした。
ポリアモリーの恋人がいる(いた)と回答した男女300人に、メタモアに嫉妬することがあるかどうかを聞きました。
※メタモアとは
パートナーの他の恋人のこと。
「はい(嫉妬する)」と回答した人が半数を超えました。
<男女別の調査結果>
| はい(嫉妬する) | いいえ(嫉妬しない) |
男性(188人) | 104人(55.32%) | 84人(44.68%) |
女性(112人) | 52人(46.43%) | 60人(53.57%) |
女性より、男性のほうが嫉妬をする人が多いようです。
パートナーの他の恋人、メタモアに会ったり連絡を取ったりしたことがあるかどうかを聞きました。
ポリアモリーの交際では、メタモア同士が接点を持つことは決して珍しくありません。
約半数の人が「ある」と回答。
男女別で見ると、男性のほうがメタモアと接点を持っていることがわかります。男性のほうがメタモアに嫉妬する人が多いのは、このためではないでしょうか。
パートナーがポリアモリーでも、幸せを感じているかどうかを聞きました。
残念ながら、「はい(幸せ)」と回答した人は少ない結果となりました。特に女性は「どちらかと言えば幸せではない」と回答した人が多く、悩んでいる様子が見て取れます。
ポリアモリーの人と交際経験があると回答した男女300人に、あなた自身はポリアモリーかどうかを聞きました。
「はい(ポリアモリーだ)」と回答したのは81人(27%)、「そうかもしれない」と回答したのは92人(30.67%)で、いずれも決して少なくない回答割合になりました。
<男女別の調査結果>
男性より女性のほうが「いいえ(ポリアモリーではない)」と回答した割合が高くなりました。ただ、「そうかもしれない(ポリアモリーかもしれない)」と回答した人は女性のほうが若干高い割合に。
ポリアモリーのパートナーと交際した結果、自身もそうなのではないかと考えたり迷ったりしているようです。
<年代別の調査結果>
「はい(ポリアモリーだ)」と回答した割合がもっとも高かったのは30代。回答者74人中27人(36.49%)でした。「そうかもしれない(ポリアモリーかもしれない)」の回答割合が高かったのは20代で、47人中20人(42.55%)。
反対に、「いいえ(ポリアモリーではない)」と回答した割合がもっとも高かったのは50代で、82人中43人(52.44%)でした。
自分が「ポリアモリーだ」「ポリアモリーかもしれない」と回答した男女173人のうち、有効回答とみなした168人に対し、自分自身がポリアモリーだ(かもしれない)と気付いたタイミングはいつだったのかを聞きました。
男女ともに多かったのは「社会人になってから(60人)」でした。
次いで、「高校生のころ(33人)」「中学生のころ(28人)」と続いていることから、好きな人ができたり友人と恋愛について話したりする時期に気付いている傾向がわかります。
<男女別の調査結果>
女性のほうが早い段階でポリアモリーだ(かもしれない)と気付いているようです。男性は社会人に次いで、「高校生のころ」と回答した割合が高くなりました。
自分がポリアモリーだ(かもしれない)と気付いたのはなぜだったのか、そのきっかけについて聞きました。
最多回答は「一人だけを好きになれないから(52人)」でした。
<男女別の調査結果>
男性は複数人を好きになることや、恋人ができてから自分がポリアモリーだと気付くことが多いようです。
一方女性は、一人だけを好きになれないことのほか、周りに指摘されたことがきっかけだと回答した人が多数。女友達同士での恋愛トークで、自分の恋愛感覚が異なることを指摘されて気付くようです。
ポリアモリーだ(かもしれない)と回答した男女に、恋愛対象となる性別について聞きました。
20代男女、30代男女、40代男女、50代男女それぞれの回答を見てみましょう。
20代男性は回答に大きなばらつきは見られません。一方、20代女性は「男女両方が恋愛対象」と回答した人が非常に多くなりました。
30代男性は、異性(女性)のみが恋愛対象という人がほとんど。30代女性は、20代女性ほどではないもののやはり男女両方が恋愛対象とする人が多く見られました。
40代男性は、30代男性よりも女性(異性)のみを恋愛対象とする人が多くなりました。20代女性・30代女性と同様、40代女性も多くの人が恋愛対象を男女両方としています。
最後に、50代です。50代男性はほぼすべての人が、恋愛対象を女性(異性)のみとしています。50代女性については、やはり男女両方を恋愛対象とみている人が一定数いることがわかりました。
ポリアモリーだ(かもしれない)と回答した男女168人に、現在パートナーが何人いるかを聞きました。
もっとも多かったのは「1人(80人)」。次いで「3人(25人)」「0人(18人)」「2人(18人)」と続きます。
複数人(2人以上)との交際でもっとも多かったのは3人。5人、6人、7人、それ以上の人数と交際していると回答した人もみられました。
ポリアモリーだ(かもしれない)と回答した人に、パートナーをどうやって見つけたのか聞きました。
男女ともにもっとも多かったのは「もともと知り合い(友人)」で67人。次に、「職場や仕事関連(56人)」「マッチングアプリ(52人)」「人からの紹介(33人)」と続きます。
パートナーの見つけ方については、若い世代ほどマッチングアプリやポリアモリー交流会(ポリーラウンジ)を利用している傾向に。反対に、年代が上がると知り合いや職場関連の人など身近な存在からパートナー探しをしていることがわかります。
「自分はポリアモリー」だとパートナーに伝えたのはどのタイミングだったのでしょうか。ポリアモリーだ(かもしれない)と回答した男女に聞きました。
男性の最多回答は「付き合う前」で117人中48人(41.03%)、一方の女性は「付き合ってから」で51人中20人(39.22%)という結果でした。
「その他(自由記述)」の回答には、まだパートナーにカミングアウトしていないという回答が寄せられています。
自分自身がポリアモリーであることを、パートナー以外に告白した人がいるかどうかを聞きました。
全体でもっとも多かったのは「友人(68人)」でした。
<男女別の調査結果>
男性は「友人(54人)」が最多回答ですが、女性は3番目の「親以外の親戚(15人)」が最多回答に。親でもきょうだいでもない、絶妙な関係性の人にカミングアウトをしているようです。
<年代別の調査結果>
年代別で見てみると、年代が上がるほど家族・親戚にカミングアウトする人が少なくなり、友人に告白する人の割合が上がりました。
ポリアモリーだ(かもしれない)と回答した男女に、ポリアモリーの恋愛で重要だと思うことを聞きました。
もっとも多かったのは「パートナーに嫉妬しない(68人)」。次に、「平等に接すること(56人)」「隠し事をしない(53人)」「メタモアに嫉妬しない(45人)」と続きました。
<男女別の調査結果>
女性はパートナーへの嫉妬より、「平等に接すること」に重きを置き、男性はパートナーに嫉妬しないことや隠し事をしないことに重きを置いていることがわかります。
自分がポリアモリーだ(かもしれない)と回答した男女に、ポリアモリーならではの悩みについて聞きました。
僅差で「自分がおかしいと感じる(42人)」「パートナーに罪悪感がある(41人)」「周りに相談しづらい(40人)」と続きます。
今回の回答では少数派となったものの、「理解してもらえない(27人)」「偏見がつらい(24人)」という回答も。「わたしはポリアモリーです」とは大っぴらに言いづらく、悩みを打ち明けられる場も少ないことから、一人で抱え込んでいる人も少なくありません。
最後に、自分はポリアモリーだ(かもしれない)と回答した男女168人に、ポリアモリー当事者として今後望むことがあるかを聞きました。
「考え方を広く受け入れてほしい」「ポリーラウンジが増えてほしい」が同率1位に。
ポリーラウンジとは、ポリアモリー本人やポリアモリーと交際している人、その他ポリアモリーという考え方に興味がある人などが参加する交流会のことです。おもにSNSなどで募集されており、さまざまな場所でポリーラウンジが開催されています。
また、「ポリアモリーの人が増えてほしい(42人)」「ポリアモリー同士で家庭を持ちたい(34人)」「複数の人と法的に結婚できるようになってほしい(32人)」など、ポリアモリーとしてもっと堂々と恋愛ができる環境を望んでいる人も少なくありませんでした。
そして、「モノガミーになりたい(19人)」という人も。
モノガミーとは、一夫一妻制のように一人だけをパートナーとする恋愛スタイルです。ポリアモリーとして生きて恋愛をしてきたものの、さまざまな苦労をしたり偏見の目を向けられたりしたことがうかがえます。
「ポリーラウンジが増えてほしい」という希望が多いように、ポリアモリーの人が広く受け入れられて堂々と恋愛しやすい環境作りが望まれます。
今回の調査では、ポリアモリーの人は決して多いとは言えないものの、少なくはなく交際経験がある人・ポリアモリー当事者の人も一定数いることがわかりました。
「複数恋愛」と聞くと、「うらやましい」「楽しそう」などポジティブなイメージを抱く人が多かった一方、ポリアモリー本人は「一人だけを好きになれない」「周りと違うと気付いた」など、さまざまな苦悩を抱えていることもうかがえました。
単なる浮気性とひとくくりにされることもあるポリアモリーですが、実際には浮気・不倫のように本命とその他のパートナーがいる関係性ではなく、すべてのパートナーを平等に愛しているのが大きな特徴です。
もし、自分もポリアモリーかもしれないと感じたら、ポリーラウンジやSNSなどで情報収集してみるのもおすすめです。
今後も既婚者クラブでは、サービス向上のため多様化する恋愛スタイルやパートナー湿布についてさまざまな観点から調査を行ってまいります。
既婚者クラブ代表者 鈴木慎吾
今回の調査について、データや詳細に関するお問い合わせからお願い申し上げます。